SSブログ

死都日本 [本]

IMG_0927.jpg

東日本大震災で事故を起こした福島原発事故が未だ収束していないのにも関わらず、国は原発の再稼働を急ごうとしています。このような流れに警鐘を鳴らすような本を読みました。読んだのは石黒耀の「死都日本」2002年に刊行された災害小説。

わかりやすく言えば小松左京の「日本沈没」を火山噴火に置き換えたものだが、破局噴火は実際6300年前に喜界カルデラで発生し、南九州の縄文文化を破滅に追い込んだほどの災害なのだから、リアリティは断然こちらの方が上ではある。またこの小説は火山学者、団体からその知識の豊富さや噴火の描写を大絶賛されたことも価値が高い。

20XX年 霧島山の地下に埋もれていた加久藤カルデラが30万年の眠りから覚めようとしていた。霧島の火山観測所を訪れていた日向大学の助教授「黒木」と宮崎日報の記者「岩切」は運悪く破局噴火に遭遇することになり、迫りくる火砕流から愛車の旧型カリブを駆っての逃避行を始める。政府も火山災害対策委員会を招集し避難指示を出すが、近隣の市町村とは連絡は途絶え、巨大火砕流は都城市を焼き尽くし宮崎市に迫ろうとしていた。

黒木は講義で学生たちに対し「巨大火砕流の発生は防災工学的な対策は考えることさえ意味がない。21世紀になっても大地震や大噴火は神の領域だと」語る。南九州はほぼ全域が火砕流に襲われた場所であり、先日再稼働のニュースがあった川内原発がある場所も例外にもれず火砕流の地層が残っている。

この小説では川内原発は政府の指示で核燃料棒を抜き運転を止めさせているが、稼働中に火砕流に襲われた場合、日本はどうなるのだろう。この本を読んだ感想はともかく、原発が人類にコントロール出来ないシロモノであることは疑いようがない事実なのである。以下、文章の抜粋にとどめておきたい。

「ところが、数千年に一度となると崩壊規模が滅法大きく、その記憶は伝説と化す。まして数万年サイクルの崩壊規模は人智の及ぶところではない。神の領域である。災害規模も破局的となる。しかし、それはいつか必ず襲ってくるのである」

「過去の話と切り捨てるのは早計だ。このような激烈な噴火は、南九州は百七十万年間にわたって連綿と続いており、次の爆発は明日起こっても不思議ではない」

第一、姶良とか阿多とか、日本地図に載っていない巨大活火山が、この国に存在することを何人の政治家が知っていよう。しかも、それらが破局的噴火を起せば一日で日本社会が崩壊することなど、誰一人考えたことがなかったに違いない」

「成人日本人の脳には、1991年の雲仙普賢岳大火砕流の映像が焼き付けられている。ところが今、自分達の方へ押し寄せて来る火砕流は、見える範囲内だけでもあの大火砕流の千倍以上あった。」

「六千三百年前の鬼界火山の破局的噴火時には、50キロの荒海を乗り越えた火砕流が九州本島に上陸し、鹿児島県を焼き尽した」

「川内原発の炉内はまだ多量の放射能を帯びていたが・・(中略)・・使用済み核燃料は水蒸気爆発で破壊されればチェルノブイリの七倍の汚染をもたらす・・使用済み核燃料はプルトニウムのような毒性の強い放射能元素を含むため日本列島は今世紀いっぱい人が住めなくなる可能性が高かったのである」

「幸い今回の噴火では、火砕流に襲われた原子力発電所が偶然、廃炉になっていたので助かりましたが、もし稼働中なら日本人は住める国土を失うところでした。偶然が二度続く保証はありません。この災害国で原子炉や放射性廃棄物保管施設を維持するのがいかにきわどい賭けか、関係者の皆さんにも十分お分かりいただけたかと思います」


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

さよならドビュッシー [本]

f0149664_1085893.jpg 

 第8回「このミステリーがすごい」略して「このミス」大賞受賞作。分類上ミステリーはミステリーだけど生粋のミステリーファンには評価されないだろうと思われる小説。

内容は人気アニメ「のだめカンタービレ」と浅見光彦シリーズを足して割ったようなもので登場人物のキャラもアニメ風だし、ちょっとついていけない面もあるが、オリジナリティーがなくともある程度、構成面で勝負に持ち込めているのは認めたい。

途中投げ出しそうになりながらも、ようやくたどりついた最後の展開には正直驚いたが、これによって途中のスポ根の純情さは木端微塵に吹っ飛ぶことになる。別にミステリーにしなくても・・・というのが私の率直な意見。

「ドビュッシー」や「アラベスク」とか「月の光」だとかクラシック音楽用語が何のことやらわからない人にも楽しめる内容になっていますが、続編は同じくクラシック系で「おやすみラフマニノフ」だそうです。登場人物がピアニストですから仕方ありません。今後は嶋先生メインで3部作にでも挑戦してほしいものです。ペンネームから著者は岐阜県のひとかなと思ったら、その通りでした。何でって?わからない人は調べてね。

ドビュッシー ・・・ フランスの作曲家で印象主義音楽の第1人者。ソフトバンクのCMお父さんが空を見上げているときのBGM「亜麻色の髪の乙女」が有名で、日本ではロマンチックなピアノ曲に人気があります。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

八日目の蝉 [本]

7210d77d7c7d9df478653b4caaec287c.jpg

蝉は成虫になって七日で死んでしまうが、もし八日目まで生き延びた蝉がいたとしたら、その蝉は何を見、何を思うのか・・・愛人の子供を誘拐し四年間逃亡する野々宮希和子。事件を引きずって生きている当の被害者、恵理菜。その荒唐無稽なサスペンスが話題を呼んだ角田光代の小説。

誘拐した子供を薫と呼び、東京から名古屋、そして「エンジェルホーム」といういかがわしい宗教施設に身を寄せることになる希和子と薫。誰が見ても普通の親子にみえるが、それも所詮は砂の城でしかなく、警察の影におびえ、施設を抜け出し瀬戸内海の小豆島にたどり着く。

島の温かい人たちに囲まれ束の間の幸せを感じる希和子と薫だが、一枚の写真がもとで、ついに逮捕される。2章では誘拐された恵理菜(薫)の苦悩とエンジェルホームにいたマロンちゃんこと千種との再会、事件を記事にしたいという千種に誘われ小豆島に向かう二人の姿を描く。

母とは何か、家族とは・・・憎しみだけではなく母性という生理的な動機で犯罪を犯すことになる希和子の心理とは・・・親でもなく女でもない私には理解できないこともありますが、人の営みの複雑さを考えさせられます。しばらく尾を引きそうな不思議な小説。今でも私の脳裏にはあの光を跳ね返すようなぎらぎらした瀬戸内のきらめく波濤が浮かんでいます。

NHKでドラマ化された(壇れい・北乃きい)が、来月には映画版(永作博美・井上真央)が公開されるそうです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

のぼうの城 [本]

20090618224020816.jpg

豊臣秀吉の小田原攻めの時、本城が落ちたにもかかわらず、最後まで開城しなかった武州忍城。城主はさぞ名将かと思いきや、馬にも乗れず何の武功もない「でくのぼう」のような大男のため、農民から「のぼう様」と言われていた成田長親という城代だった。

成田家当主の氏長は戦の始まる前から豊臣方に寝返るつもりで、敵が攻めてきたら降伏するように言い含め、少しの人数を城に残しただけで小田原城に去ったが、2万の大軍に囲まれた忍城では寄せ手の総大将、石田光成が寄こした使者の横柄な態度にめずらしく激した「のぼう様」長親は、勝手に戦うと言い出した。

戦史に残る有名な「忍城水攻め」を壮大なスケールで描く歴史ドラマ。光成の「あらくれ物の関東武者をこうも自在に操ることのできる大将とはいかなる人物か?」という疑問に本書は答えられるのか否か、「まあ読んでみて」としかいいようはありませんが、一気に読ませるだけの面白さはなかなかの物でした。映画化され来年秋に公開の予定ですが、映画にするにはうってつけの題材ではないかと思われます。

映画「のぼうの城」公式サイト→http://nobou-movie.jp/index.html


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

マイマイ新子 高樹のぶ子 [本]

 10102422.jpg

舞台は昭和30年代の山口県防府市国衙。かつて周防の国府がおかれた防府市で育った作者の自伝的小説だ。新子は額にツムジのある9歳の女の子。ちょっとしたことに興味を持ち、近所の男の子たちと防空壕に冒険に行ったり、じいちゃんに造ってもらった秘密のハンモックで空を見ることが大好きだったりする。

新子のマイマイ(つむじ)は、びっくりした時も、悲しい時も反応し髪の毛が立ってしまう。そんなマイマイが反応したエピソードを26章にまとめているが、私が好きなのはタツヨシのお父さんが自殺し、お父さんが騙されたというキャバレー「カリフォルニア」の女の人にカタキウチしようと、タツヨシと二人で出掛けるエピソード。子供にとって人の死は重いテーマだと思うが、新子は今の子供たちと違い、わからないなりに短期間で乗り越えていっている気がする。

この小説のタイトルは児童文学のようだけど、けっして子供の読む本ではない。また昭和のノスタルジーを味わうための本でもない。すべてが前に向かって進んでいた高度成長期のひたむきさは、今の時代に行き場をなくした若い人に読んでほしい。活字離れの現状はどうにもできないが、幸いこの小説は「マイマイ新子と千年の魔法」のタイトルでアニメ映画として公開されている。

映画は近年のアニメとしては奇跡的なほどの出来で、かつての輝きを無くしてしまったスタジオジブリの公開中の映画を見るくらいなら、DVDも出ているので、ぜひこちらを見てほしい。小説を見るのが無理でも、映画なら難しくないだろうと思う。それで何かを感じてもらえれば、私もうれしいです。

映画「マイマイ新子と千年の魔法」公式サイト⇒ http://mai-mai.jp/top.html


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

武士道シックスティーン [本]

9784163261607_1L.jpg

 作:誉田哲也

子供の頃、剣道をやっていたことがある。ひ弱で病弱としか言いようがなかった私(今は面影もないが・・・)が剣道を始めたのは、たぶん頼まれたら断れない優柔不断な性格が災いしたに違いない。冬休みの小雪舞う寒い朝も稽古に出かけ、村や郡の大会にも何度か出場したが、だいたい1回戦ボーイだった。ほとんど2本取られて完敗のシーンが多かった。

ただし一度だけ前年優勝した強敵に勝って銅メダルをもらったことがあった。今考えても不思議なことだけど、圧倒的に手数の多い相手に攻め込まれ、つばぜり合いで押されまくったのに、なぜか竹刀の乾いた音が綺麗に響くような面が決まったのだ。はまったとしか言いようがないが、そのあとは時間まで逃げまくっていた。相手にしたら谷(田村)亮子が前半指導を取られてそのままポイントがなく負けてしまったようなものだったろう。

この小説の二人の主人公に例えるなら、私は西荻早苗で相手の少年剣士は磯山香織みたいなものか。武蔵の五輪の書を愛読するような剣道オタクの香織はあくまで勝負にこだわり、中学最後の大会で負けた無名の剣士「甲本」(その後両親の離婚で西荻に改姓)と決着をつけるため、同じ高校に進学する。一方早苗は日舞が出来なくなったため仕方なく剣道を始めたという、あまり勝負にこだわらないお気楽な剣士。当然、香織はその態度が許せない。自分に勝った相手には常に強くいてもらいたいという、押しつけがましい理由で、早苗に自分の思いをぶつける。

今時の若い高校生の気持ちなんて、わかるはずもないけれど、香織と早苗の心の葛藤や、不安、理想と現実のギャップの刹那さ、自分の目指すべき剣道とはなにか?立ち止まらず突っ走る香織の姿に、応援したい気持ちが湧いてきて、気がついたら、6時間ほどで読み切ってしまった。ぜひ若い人に読んでもらいたい小説です。

この小説、GWに映画化されて上演されますが、磯山香織に成海璃子、西荻早苗に北乃きいという、まさにうってつけのキャスト。今から楽しみです。   

映画公式サイト→http://www.bushido16-movie.com/

文藝春秋特設サイト(小説)→http://bunshun.jp/pick-up/bushido18/index.html

 


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

高熱隧道 [本]

41siKZeokRL.jpg

昨今、ニュースを見ているとダムの話が多い。止めるだの、止めるなだの、意見は様々だ。いいのか、悪いのか結論は出ませんが、私はダムができると下流域の水量が減り、川が川でなくなるからどちらかといえば反対ですね。昔は発電といえば水力発電が主流だっただけに、たくさんのダムが造られました。

先日読んだ吉村昭の小説「高熱隧道」も黒部の電源開発に伴う軌道隧道の話で、戦時中の国策として造る造らないではなく、早く造れといわれて多くの犠牲者を出しながら工事が行われた話です。なにしろ地熱の影響で坑内の温度が166度にも達したなか工事が続けられたのですから、常識外れとしか言いようがありません。ダイナマイトの自然発火で肢体バラバラの人夫、八十人以上の人命を一瞬で奪う泡雪崩、戦後の大事業「黒部ダム」建設以上の過酷な戦いの記録がここにあります。ただ内容が悲惨すぎてプロジェクトxでは扱えない気がしますが・・・

実はこの隧道は今でも使われていて、黒部峡谷鉄道終点の欅平から黒部ダムの途中にあります。関西電力の専用なので一般の人は見ることはできませんが、年に数回行われる見学会の抽選に当たれば見ることはできるそうです。抽選倍率は5から6倍程度、くじ運の強い私なら当選の可能性は高いかも?

見学会の詳細
http://www.kepco.co.jp/info/hokuriku/koubo/index.htm

 


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

深い河 [本]

513R878FTZL__SL500_AA240_.jpg

ここのところの世界不況の影響で、私の勤める会社も残業がなくなってしまった。こんな時何をする?冬で日の暮れも早くて寒いし、外に出るのもおっくうなので小説でも読むくらいしか考えがつかない。

そこで読んだのが遠藤周作の深い河(ディープ・リバー)だ。遠藤周作といえば、自身がクリスチャンであることから「沈黙」に代表される宗教的な小説が多いが、この小説もその中のひとつ。タイトルの深い河は、ずばりヒンズー教徒にとって聖なる川ガンジス川のこと。特に二つの支流がガンジスに合流するヴァーラーナスィーで死んだ物は誰でも輪廻から解脱できると信じられている。

妻を癌で亡くし、その最後に残した「私は必ず生まれ変わるから探して・・・」という言葉を頼りにインドを目指す磯辺。動物好きの童話作家、沼田、戦時下ビルマのインパール作戦を生き抜いた木口、今の生活に光を見出せずもがいている美津子、誰かにすがることより、自分から何かを探しに行こうとする本書の登場人物たちは、私から見ると頭が下がる。わたしは彼らのような羽根は持ち合わせてはいないような気がするのだ。

そして美津子が学生時代、色仕掛けで弄んだ大津は、神父になるためフランスに渡るが、西洋の一神論に対し東洋的な汎神論を口にするため受け入れてもらえず、ヴァーラーナスィーで行き倒れたアウトカーストをガンジスに運ぶ手伝いをしている。そんな大津に美津子は苛立ちさえ覚えるが、なぜか大津の存在を無視すればするほど、その存在が気にかかるようになる。

私は「沈黙」を読んだ時、棄教することになる主人公ロドリゴも、棄教させる側の井上奉行も、銀貨でロドリゴを幕府に売り渡したキチジローも、人としては普通の人間に過ぎないと感じたが、この小説で感じることは、一番神に近い場所にいるのは、神父を目指した大津よりも、以外に神にもっとも遠いと思われている美津子ではないのかなんて思うこともある。

三島由紀夫は「豊饒の海」第3巻「暁の寺」で仏教における輪廻の牙城「唯識論」に真っ向から立ち向かったが人物描写に妥協を許さない三島のほうが、私にはわかりやすく、難解といわれる唯識より、この小説に登場する人たちの心理のほうが何故か難しく思えた。

「沈黙」を読んで以来、現地、長崎に出かけたり、仏教の考えを見定めようと奈良へ行ったり、無駄な時間を費やしたようにも思うが、ここ五年くらいで、わかりかけたことも少しはあります。この小説を契機に、また長崎の大浦天主堂へ行き、椅子に腰掛けて目を閉じると何か大事なものが見えてくるのかも知れません。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

となり町戦争 [本]

 

 

第17回小説すばる新人賞を受賞し、その荒唐無稽な内容が、物議を醸した問題作。
 
主人公は届いた広報誌で、自分の住む町が「となり町」と戦争を始めたことを知るが、日常生活で戦争の実態を感じることもなく、まるで平和な国で他国の戦争の様子をテレビで見るような気分しか感じない。町役場から戦時偵察要員に任命され、役場の職員、香西さんと偽装結婚し、「となり町」に潜入することになるわけだが・・・
 
SFチックな戦争物というと筒井康隆の「東海道戦争」が有名ですが、この小説には戦争描写がまるで無く、戦争の姿が見えない恐怖と、行政が事業として戦争を行っているという、理解できない恐怖を描いています。戦争というのは理不尽な物ですが、それを商売にする(どこかの国ではやってます)事業にする(どこかの国の企業はTVゲームでやってます)というのは、もっと理不尽なことではないのでしょうか。「僕と香西さん」の繋がりもどこかにバーチャルな側面があって、読者は目に見えないものを見つけようと、あがくのかも知れません。
 
実はこの作品、角川ヘラルドで映画化され、この春にも封切りの予定だそうです。主人公・北原修路に江口洋介、ヒロイン香西瑞希は原田知世、そしてロケ地は何と私の実家、愛媛県松山市の「となり町」愛媛県東温(とうおん)市。東温市の映画館にいったら「となり町戦争」のメイキング映像が流れていました。東温市は小説にも出てくる「となり町戦争推進班」をつくってロケ協力したようです。
 
となり町戦争 ←公式サイト

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

青の時代 三島由紀夫 [本]

この小説の主人公のモデルは、戦後間もない昭和二十四年に起きた、「光クラブ事件」 の高金利金融会社「光クラブ」 の社長、山崎晃嗣。東大在学生だった彼は、やがて物価統制令法違反等で逮捕され、事業は破綻、青酸カリ自殺をとげ事件は終わる。

三島は主人公、川崎誠の生い立ちを、少年期から深層心理まで追求していくが、父との確執から始まり、普通とは思えない自意識、ある種、変質的と思える女性観は、やがて、モラルの欠如を伴った金融会社の設立に手を染めていくことになる。三島はこの主人公を時に突き放し、医者がカルテから病を探るかのように、独特の表現で、彼の姿をX線写真のように鮮やかに描き出す。

平成十八年暮れ、経済界最大の事件「ライブドア・ショック」を見つめ直すには格好の題材。投資家の私も投資スタンスの転換を迫られたこの事件を時間がたった今、冷静に考えてみたいと思う。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。